「雪解けと花咲み」

 

　　十年前、僕はニューヨーク、フィラデルフィアの片隅で Ice Age を作っていました。何を思ったかデビューアルバムをアメリカで制作しようと思い立った向こう見ずな僕は、憧れを憧れで終わらせないようにもがいていたのだと思います。

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　　今の目線から昔の三船を思うとその選択は何も間違っていなかったと感じます。飛び出してよかったし、もがいてよかった、憧れの重力に縛られた大人にならなくてよかった。現地で出会った人々が、音が、その経験が、僕の血肉になって僕は大きく成長ができました、それは何事にも代え難い、得難い経験でした。

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　　世界の裏側でいろんな人が生きていて、それは夢でもなく現実で、その人たちのことを、歩いた景色を、街に溶け込んだ音楽のことを思い出しながら、自分の体に染み込んだその感覚を頼りに僕は今でも音楽を鳴らしています。今では多くの仲間たちがロットの音楽を助けてくれます。このアルバムのおかげで世界中に仲間ができました。音楽を十年もやり続けるって当たり前のことじゃないんだと思います。

 

　　10年前は東日本大震災のあとで凍ったような世界で音楽を作っていました。今では氷はすっかり解けてしまい、剥き出しの大地が、現実が、毎日のように僕らに襲いかかってきます。氷が解けた世界の中で十年経ったこの Ice Ageの音楽がどのように鳴るのか？ 雪解け水の残酷な春の世界で花が弱々しく咲くとしたら、僕はその景色の中で新しい音を鳴らしたいのです。

 

　　氷が解けたあとのツアー Ice Age : Melt and Blooms です。ロットと一緒に音楽で遊んでくれたら嬉しいです。